きみはなけなしの金貨を乞食に恵んでやった。「おありがとうござい」乞食は金貨を手に握りしめながらきみに礼を言った。きみが立ち去ろうとすると、「待った。だんなは冒険者だろ。ここにはよくやって来るのさ、冒険野郎どもが。だけど気をつけなよ。恐ろしい怪物どもがいるし、一番奥の部屋には、ゴブリン・ロードっていうこの洞窟の親玉がいて、こいつが魔法の武器でもないと倒せないのさ。山賊のヘルボーなんざ、しっぽを巻いてとっとと逃げ出して行っちまいやがった、けけけけ。だんなはいい人だ、いいこと教えてやろう――鍵を見つけるのさ。なんでも鍵は全部で四つか五つあるらしい。まあ、他にはろくなもんも落ちてないね、この洞窟にはよ。ゴブリン・ロードの部屋だけは別さ。あいつはお宝をどっさり集めてやがる」 きみは乞食に礼を言うと、元来た道を引き返そうとした。 「だんな、地図を描きながら行きなよ。そしたら迷路にも迷わないだろうさ。ここのゴブリンどもは珍しく、東西南北に洞穴を掘り進めるって習慣を持ってるからな。じゃ達者でな、だんな」 きみは乞食の声を背中で聴きながら、丁字路に引き返した。 |