クエスト達成講座前編 




 地下街に上がってみると
エプロンおばさんがうろうろ。一見、
主婦って感じだが、何してるんだろな?
 何々……それはさぞやお困りでしょう。
一緒に捜して差し上げましょう。



 だいたい買い物中に落としたと
言うんだから、ここら辺りだろう。ん?
そこに何か光るものが!
邪魔だおやじ、そこどけ。



 あのオバサンが万引きの常習犯だとは
知らなかった。おかげていいモノ
いただいちまったぜ。万引きからもらうと
共犯になるんだろうか? まあ気にしない。



 自分でやれよ、と言いたいところだが、
暇だからあとで引き受けてやろう。
装備を整えてまた来るからな、
それまで待っててくれ。もちろん礼は
はずんでくれるんだろうな?



 こいつか。やけに自信ありげだな。
「井の中のかわず大海を知らず」って
ことわざを知らないようだ。
いっちょ、思い知らせてやろう。



 思い知ったか、でくのぼう野郎め。
軽く一蹴――とまではいかなかったが、
とりあえず身の程知らずを叩きのめして
やったぜ。
 何? 井戸に落ちただって?
 そりゃ大変。



 とりあえず井戸に下りてみると……。
我ながら人がいいなあ。普通なら
しらん顔するけどね。見返りのため、
見返りのため――と。
なんだ、ほんとにいたよ。



 小さな子供の頼みとあらば、むげに断る
訳にもいかないだろう。とか言いながら、
自分だけこっそり井戸から這い上がろう
なんて――おまえは蜘蛛の糸か?
 いやぁ、ちょっと確かめてみただけ
だってば。やっぱり登れないな。



 なんだここは? 真っ暗だし、井戸の
底のそのまた奥なんだから当然
なんだろうけど、なんで火が
消えてしまうんだろ?



 チビッ子と言えども、敵に襲われたら
闘わなければならないのだ。武器と
言えばビニールバット一本しか
持ってない。こういう時のために拳銃は
取っておいたのだ。早速装備させよう。
しかし子供に実弾の入ったピストルを
持たせるなんて、悪い大人。
「右手にぃ、ピストルぅ♪ 左手にぃ、
ビニールバットぉ♪」 って歌、昔
あったよなあ、なかったっけ?
 またナツメロの癖が出た……。



 何かが襲ってきたみたいだ。よし、
戦闘開始! 敵も味方もよく見えないが、
俺様の動体視力はなかなかのもんだ。
自動小銃の弾が止まって見えるぜ。

 


 やっと出口を見つけたと思ったのに、
ガイアのお節介焼きめ……うう。

 


 逃げたペットを捜して暗闇の中を
うろつき回るうちに、得体の知れない
敵に遭遇。なんだこいつ? 銃が
効かない。超能力で攻めるしか
なさそうだな。お、チビッ子の唱えた
お祈りの言葉に、見えざる敵も
かなりのダメージを食らったみたいだぞ。
 インビジブル相手だと、良平は吹雪の
連発、オニビは烈風パンツ、じゃなくて
パンチ、ガイアはもっぱらMP補給と
治療。チビッ子は勝手に行動――
なのでままならないが、超能力を
使いまくる傾向があるが自ら
アイテムは使わないので、そろそろ
MPが減ってきたなと思ったら、
きれいな水を飲ませてあげよう。
 この迷路で襲ってくる敵は金なんか
持ってない。しかしこのインビジブルは
倒した時に得られる経験値が莫大な
ボーナスキャラだ。鍛えるのには
もってこいの敵だ。他には大して強い
敵もいないが、ミュータントこうもりの
超音波には気をつけるべし。食らう
度にMPがじわじわと減っていくからだ。
オニビが火炎を覚えたら、早めに
焼き払ってしまおう。



 ふうー、持久戦になったが、何とか勝てた。
戦闘終了後はチビッ子に回復をやらせよう。
最初からエネルギー補給が使えるし、
メビウスの鼻輪のお蔭か消費MPは
ガイアの半分で済む。残り少なくなった
きれいな水を節約せねば。
 各自のレベルと状態の下にある数字は
経験値、/の左が現在の累積経験値、
右が次のレベルに必要な累積経験値。
パーティに加わった時にはまだレベル
10で、その時の良平のレベルが15
だったのに、もう追いついている。
これを見てもわかるように、チビッ子は
成長が早い。育ち盛りのオコチャマ
だからね。そのうち強力な助っ人に成長
することであろう。
「おとなしくてもいい。凶暴に育って欲しい」
って、また古いCMのパロディ持ち出して。
見てる人ほとんど「?」だっつうの。
すみましぇん。「古いやつだとお思い
でしょうが、古いやつほど新しいものを……」
 さて、レベルも20に達したので、
お次からは雷撃を食らわしてやるとするべか。



 やっと見つかったか、やれやれだな。
さあ、さっさとここから出ようじゃないの。
「めぇー」ってあんたもしかして……



 今更火が点いたって……とは思うけど、
やっぱりまだ宝がどうのとか言ってるし。



 確かこの辺に湧き水が湧いてる泉が
あったはず。そうとわかりゃあ、技の
使い惜しみなんかしてられっかよ。
灯りが燈りさえすれば楽勝、楽勝。
雷撃も火炎もじゃんじゃん使いまくって
やる。ん? すぐそこに宝の箱らしき
物も見えるな。



 そう、それが手っ取り早くて一番。



 何も書いてない紙切れ一枚とは……。
こんなもの鍵掛けて大事にしまってある
なんてどういうつもりなんだ、ぷんぷん!
 おい羊、泳いでないでさっさと出ろ。



 しょーがねーなあ。一旦アジトに戻るか。





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